序論:
コンサート用クラシックギターは(ピアノのように)ポリフォニック楽器である故、調和的に(音色の豊かさの観点から) 又周波数の広範囲振幅の観点から、 “小さなオーケストラ” を再現出来るべきである。
偉大なるギター奏者、セゴーヴィア巨匠はギターをそう定義した。.
ギターの音響制限
I クラシックギターの主な限度は次に挙げられる。:
1. 伝統的ギター(トーレスからハウザーまで)で約85~987 Hz、モダンモデルでは約110~987Hzと いった 、帯域幅(周波数応答)における著しい 制限
2. 非常に不規則な周波数応答(音色のアンバランス) ― それは一定の帯域幅内における幾つかの 周波数で尖りと穴に特徴付けられる動きを見せる
3. 音量制限.
上述の3つの限界について詳しく見て行こう。
限られた“周波数応答” とは何を意味するか:
私達のポリフォニック楽器(クラシックギター) から放出される 周波数帯(“カバーされている”帯域幅)を最も知られたポリフォ ニック楽器、つまりピアノあるいは全弦楽器のそれと比較してみると著しい限界が観測される。
表1a
音色の不均衡の問題:
ギターは異る周波数応答範囲においてボディが共鳴しない幾つかの周波数を表し、その範囲内ではぎくしゃくした不規則な、つまり尖り(ボディが共鳴する周波数)と穴(ボディが共鳴しない周波数)に特徴付けられる応答を生成する。.
この結果、音を生成するのに主に共鳴胴を利用する全ての弦楽器(擦弦楽器、マンドリン、リュート、ピアノetc etc)は、 他よりある程度強く出る幾つかの音に苦しまされる。 altre.
音量制限:
歴史的ギター(トーレス、ハウザー設計)と主要モダン型 (炭素で強化した響棒使用の“ラテックスブレース” 、 ケブラー使用表面板“ダブルトップ”設計)両方に施された、 これらの楽器のSPL (Sound Pressure Level = 楽器が発生する 最大音量)測定を目的としたテストから、検証されたクラシック ギター(現代と過去の最も有名な設計代表例)は3.7mの距離 をおいての計測で83 ~83.6 dbの値を示す事が明らかにされた (この結果から、現在に至るまで導入されて来た設計面のイノヴェーションは、音量限度と音響投影に関するこの問題点に多大な改善をもたらしていない事がわかる)。
参考までに同距離(3.7m)において、ヴァイオリンは88 db、ヴィオラ88db、チェロ、コントラバス86db、 オーボエ 約86db、ハープ約88db、ファゴットは約88dbである。
ここに抜粋した表を掲載する。
このように全ての、又は大部分の楽器はクラシックギターに比べ平均4から7db上まる(約3.7mの距離において)。3dbが私達の耳には倍の音量に聴こえる事を考慮すると、クラシックギターの音響強度制限は他楽器に比べ著しい。 このような音量制限は、異なる様々な楽器に混ざってクラシックギターを演奏する際にもある程度の困難をもたらす。
これらのテストの結果から、主な伝統的設計(トーレス、ハウザー) 及びモダン型(ラテックスブレース、ダブルトップ設計) と比較したカヴァリエーレ・セッリット設計ギターの音量限度を見てみよう。
(わかりやすいよう先述の音量制限を参考とする。
比較テストに使用されたクラシックギター
私達は、何らかの形で検証結果に影響を与え得る人的要因(ギター奏者による)から解除した、可能な限り最も客観的で実行可能と思われる2つの方法論を適用した。
1) 電気機械式台上にテストするギターを配置し、非振動箇所に小さな発泡ゴム製の支えを使って固定した。
右手を装った器機には(全ギターに常に平等なインプットを与える為)ばね鋼製ピックを取り付けた誘導電気モーターが装備さ れ、この機械仕掛けの腕に一連の弦は開放弦で、表面板に対し 60度の傾斜と0.68ニュートンに等しい力(バランス評価の目的で個々の弦のレベルを開放弦でテストする為) 、ないしSPL (Sound Pressure Level = 楽器が発生する最大音量)テスト では0.87 ニュートンの力で継続的に弾かれた。
2) 検証対象の楽器の音質と周波数拡張の評価を目的とするサイマティクステスト(以下説明) -研究により、旋法形態が放射の効果性と特質を決定する事が証明された。
なぜ振動分析を行うのか?:
表面板は特定の周波数で木材の特性、設置された響棒に応じて共鳴する。響棒は振動数とモードを断定しながら永続的に表面板を調律する。
800以上に上る検証結果分析後、楽器の質を断定するのにクラドニ図形の絶対的有効性と完璧さが確認され、年間を通じてそれは学者や弦楽器製作家が楽器分析を行う際の国際的スタンダードとなった。
以下、私達がサイマティクス分析に使用した器機
• わずか20Hzの周波数から音を出せる我々独自設計
・製作、空気ばね使用音響スピーカー
• 私達の仕様に基いた、周波数20Hzから4KHzまで再生可のイタリアメーカー製造カスタムスピーカー
• 正弦波発生器 • 信号源として正弦波発生器、出力として音響スピーカーをを接続した増幅器NAD3020E
以下“セッリットギター”と称する我々設計のギターを、 伝統弦楽器界において最高の表現とされる4種のコンサートギター (トーレス、ハウザー設計)、又同時にモダン型で最高のパフォー マンスが得られる設計と考えられる2種(ラテックスブレース、 ダブルトップ設計)と比較した。
使用されたギター以下一覧:
ギター1.網状補強響棒設計(炭素により強化された響棒
“ラテックスブレース”)
ギター2.ケブラー使用表面板“ダブルトップ”設計
ギター3.伝統的響棒ハウザー設計
ギター4.伝統的響棒トーレス設計
ギター5.クラシックギター、カヴァリエーレ・マルコ・ セッリット設計
テスト1の実験条件と使用器機
1. 室温25°
2. 湿度55%
3. 寸法9.30m x 7.50m x 3.10mの 音響処理された環境(無響室に類似)
4. 楽器から1メートルの距離に設置された騒音計兼 温湿度計
5. ブリッジからフィンガーボード方向175mmの距離に等しい点に向けられた騒音計兼温湿度計
6. ブリッジからフィンガーボード方向135mmの距離で弾かれた弦
7. 0.68ニュートンに等しい強度
8. 表面板に対し60°の傾斜
テスト1説明 :
以下表2に要約、表示されている結果に、“セッリット”ギターが弦楽器、特にクラシックギターでは現在(多声音楽と音楽一般では)考えられない目的を達成している事実が強調されている。それは音の放出レベル(強度)が全6弦間において並外れて 均等がとれている事だ。
表2.6開放弦間の均等性
テスト2の実験条件と使用器機:
1. 室温25°
2. 湿度55%
3. 寸法9.30m x 7.50m x 3.10mの 音響処理された環境(無響室に類似)
4. 楽器から先ず1メートル、次に3.7メートルの距離に設置された騒音計兼温湿度計
5. ブリッジからフィンガーボード方向175mmの距離に等しい点に向けられた騒音計兼温湿度計
6. ブリッジからフィンガーボード方向135mmの距離で弾かれた弦
7. 0.68ニュートンに等しい強度
8. 表面板に対し60°の傾斜
テストの説明
この2つのSPLテストに私達は、実験でギターの弦を弾いていたあの機械仕掛けの腕を再び使用。ただし今回は前回のように25秒間隔をおいてではなく、ブリッジからフィンガーボード方向135mmの距離で表面板に対し60°の傾斜、且つ0.9ニュートンの強度で第1弦から第6弦、第6弦から第1弦と継続的に弾かせた。
これらの条件で、ブリッジからフィンガーボード方向175mmの点に向けさせた騒音計兼温湿度計を先ずギターから1メートルの距離に設置し初回のSPL計測。次に距離を3.7メートルに増し同計測を行い、以下表3に示される結果を得た。
表3.1メートルと3.7メートルの距離におけるSPLの比較
初結果の概要
テスト1と2の比較から次のような結果が得られた。
検証された他全ギターと比較し我々の設計は
1. 異なる弦間の強度バランスが完璧
2. 近距離(1メートルで測定)での音量がより強度
3. 遠距離(3.7メートルで測定)での音量がより強度
4. 1メートルから3.7メートルに移動し測定した際の強度差が比較的小さい
5. 3.7メートルでの計測実験に使われた全4種ギターはいずれもほぼ同レベルのSPL(83から83.6db) を示した結果を考察すると、発生可音量については今日に至るまでの様々な設計や技術は進歩がないと言える
6. 3.7 メートルで88.1dbに達する我々のギターは、 オーケストラ楽器の大部分のそのレベルに 匹敵 する唯一のもの
以下、私達がサイマティクス分析に使用した器機
• わずか20Hz(3db)の周波数から音を出せる我々独自設計・製作、空気ばね使用音響スピーカー
• 私達の仕様に基いた、周波数20Hzから4KHzまで 再生可のイタリアメーカー製造カスタムスピーカー
• 任意の周波数値で正弦波を生成できる正弦波発生器
• 増幅器NAD3020E(正弦波発生器からのみの出力レベルを コントロールする為音量をフルスケールに設定済み) 、 それに信号源として正弦波発生器、出力として音響 スピーカーを接続
先ずカスタムスピーカーから約8cmの距離で音響スピーカーを設置、その上にスポンジゴム製ブロックをギターの非振動エリア下に適切に配置し、その上に裏板を下にして固定、更にカスタムスピーカーの中心がサドルの点に当たる裏板の位置と合うように置かれた。弦の強制的動作をシミュレートする為だ。.
スピーカーにより特定の周波数で表面板に振動を起こし、 その上にまぶした茶粉の様子を観察する。
振動周波数を変えながらどの数値で最も粉が跳ねるか観察 する。それらの数値がその表面板の共振周波数と定義される。
粉茶は節・腹点で形成される正確な形状に沿って動く。 当然ながら節点、つまり音波振幅ゼロの点に集まる傾向を 見せる事になる。逆に振幅が最大又は最小の点は腹点、 粉は吹き跳ばされる訳だ。
この方法により(800Hz以上の高周波数には正弦波発生器の出 力レベルを100%に、それ以外の周波数には89%に設置)、 表面板がまだ振動している周波数の最も高い数値(最大周波数 定義)と、それが共振し始める周波数の最も低い数値(最小周波数 定義)を視覚化する事によって周波数応答数値を検出した。 データーは以下の通りである。
”前例の無い程広範囲な低音域である…
共鳴胴のこのような共振周波数(45Hz) はコントラバスのそれと非常に類似する。
その音響的効果は以下の通りである。
低音は良く調音されているだけでなく、 常に稀れなまでに豊かでフルボディ且つ極めて深い。
.
更に“トルナヴォス”が設置されたギターと異なり、 この場合共鳴胴により純粋に生成された低音は他に無い クリーンな音色と自然さを特徴とする。従って楽器の射影性 特質をそのまま保つ事が出来る訳である。
モード5 カヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計ギターが達成可能な最大周波数
この場合においても前例の無い程広範囲な高音域を扱う事になる。実際、ヴァイオリンと同じ最大周波数に達成出来る共鳴胴である。この事実は音響的に見て大ホールにおける多大な射影能力を意味し、聴衆が最前列もしくは最後列に座っているかに関らずこの楽器の音を完璧に聴き取る事が出来るのだ。
このようなコンサート奏者にとって不可欠な優れた射影特性以外にも、この前例の無い程広範囲な高音域は以下のように言い換えられる。
- 第1弦は非常に透明感があり洗練されていると同時にフル、且つリッチな為“きゃしゃ”でも甲高くもなく、 大変甘く表現力豊かで音域が広い
- 演奏者が自由に使える“色彩”を指数関数的に増加して行く程大量の音色ニュアンスを提供する楽器の能力は、演奏中彼の音楽的思考を決して制限する事無く広げて行き、それを更に刺激する事が出来る…
測定した周波数応答の結果に基づき表1aは完成し次のように なる。 完成した最初の表は次のようになる。
表1c: 表1aにカヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計ギターの周波数応答を加えたもの
表のデータから我々の共鳴胴の周波数応答の音域範囲に関して言うと、コントラバスと比較出来る程の深い低音、又高音に関してはヴァイオリンに匹敵する第1音を生成する能力を持ち、その全体的な帯域幅は弦楽器総合アンサンブルのそれとほぼ一致する。
この拡張度は又、様々な基本周波数の高調波のより多くのコンテンツ、つまりより豊富な音色を意味する。
旋法分析
ヴァイオリンがそうであるようにクラシックギターの場合も振動モード、言い換えると形態学的構成は5種類[1] が視覚化可能(レーザーやホログラフィーを使う間接的手法、又は茶粉等を使う直接的手法により)、振動の旋法として分類される。
次の図解の通りモード1、モード2、モード3、モード4、モード5がある。
:
[1] エリック・ヤンソン(2020)
ヴァイオリン・ギター製作者の為の音響
以下の表5に、テスト中各楽器における各々のモード1-2-3-4-5に起因する旋法形態が視覚化されたその周波数値を示す。モードが生成されなかった場合は“無し”と記す。
表5 テストされたギターの共振モードリスト
[2] 最も重要且つクラシックギターの放射効率の研究に焦点を当てるべき値は150から450Hzにある(ヤン・ペリー“ギター及び弦楽器における音の放射測定”)
[3]ヤンソン“ヴァイオリン・ギター製作者の為の音響”
[4]このような特定のエリアで行なわれた関連するスペクトル分析を見ると、セッリット作ギターにはテストされた他4種に比べ均一性と桁違いの強度がある。
• モード1 テストされた他のギターが1度のみ(つまり1つの周波数値で) という結果に対し、セッリットギターは 実に25から761Hzの範囲において(理論的には185Hzで初めて生成される予測)11度生成達成
• モード3 テストされた他のギターが1度のみ(つまり1つの周波数値で)という結果に対し、トーレス設計と共にセッリットギターは2度生成 • モード4 テストされた他のギターが1度のみ(つまり1つの周波数値で)という結果に対し、セッリットギターは実に9度生成達成、更に重要なのは調弦周波数(432Hz-435Hz-440Hz-441Hz-442Hz) • モード5 テストされた他のギターが1度のみ(つまり1つの周波数値で)という結果に対し、セッリットギターは587Hzから3132Hzまで実に7度も生成達成 以下、セッリット作ギター上に視覚化されたモードを撮影した写真を幾つか載せる。観察 :
表面板に視覚化されたモードの写真から、理想的な品質係数Qを証明する完璧に対照な模様が描かれているのが見られる。.
全ての重要な周波数における異なる共振モードの発生は、その回数と継続性から、調和的に豊かで高強度であり又圧倒的に規則的且つ均一がとれている事実を強調する。.
音域約150Hzから450Hzでギターが示す周波数応答に品質係数は影響を受け、その楽器の特徴が決まる。[1]
私達はスペクトル分析も行い以下に示すが(持ち主に返却された為ギター4の分析は欠ける) 、これは楽器の質分析における サイマティクス手法の絶対的有効性を証明する。わかり易いよう同じグラフに並べて表示する。
1、2、3及びセッリット作ギターの、音域150~450Hzにおける周波数応答のグラフを便宜上並列して載せる。:
[1] Jurger Meyer “音響と音楽パフォーマンス ― クラシックギター” M.M.A. Von Boven “クラシックギターにおける動的応答の 最適化”
音域約150Hzから450Hzでギターが示す周波数応答に品質係数は影響を受け、その楽器の特徴が決まる。
私達はスペクトル分析も行い、以下に示すが(持ち主に返却された為ギター4の分析は欠ける)これは楽器の質分析における サイマティクス手法の絶対的有効性を証明する。わかり易いよう同じグラフに並べて表示する。
1、2、3及びセッリット作ギターの、音域150~450Hzにおける周波数応答のグラフを便宜上並列して載せる。
テストされた全ギターの周波数応答が明らかにバラバラで不規則的なのに対し、セッリットギターのグラフはほぼ直線に近 く、随時完全に“満たされて”いるのがわかる。つまり倍音が 豊富な訳だ。
以上のテストによって私達は最終論点、つまりセッリット ギターが持つ圧倒的な倍音の豊かさと均一性(従って一貫性) も証明した。
スペクトル分析(150~450Hz)比較、 左から順にギター1(ラテックスブレース設計)、 ギター2(ダブルトップ設計) 、ギター3(ハウザー設計)、 カヴァリエーレ・セッリットギター(最右)
クラシックギターが抱える主な制限を調べる事により以下の事がわかった。
制限その一
非常に限られた帯域幅(周波数応答)
カヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計ギターの周波数応答は45 Hzから3132 Hzまで致り、クラシックギターが常に悩まさ れて来た制限を超越、その数値は全弦楽器(コントラバス、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン)が持つ周波数応答の総合に相当する。
従って、様々な楽器の周波数応答を要約した表を以下に示す。
カヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計の周波数応答を 量的観点から明示した。
制限その二:
著しく不規則な周波数応答(音色のアンバランス) : nある特定の帯域幅、周波数において尖りと穴に特徴付けられる反応を表す。
実施した3種のテスト :
1) 6弦間のバランス測定2) サイマティクステスト3) スペクトル分析
制限その三
音量制限
異なる楽器(例.ヴィオラ、ヴァイオリン、ハープ、ファゴットetc) を3.7メートルの距離で測定した所、平均約88dbという 結果が出た。
テストに一貫した同距離でカヴァリエーレ・マルコ・セッリットギターは前述楽器とほぼ同等の音量(3.7mで88.1 db)、 一方実験対象の他ギターはいずれも83~83.5 dbに留まった。
人間の耳は3 dbを倍、- 3dbを半分の音量と感じる事を 考慮して頂きたい。
カヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計ギターは3.7メートルの距離でオーケストラ楽器(ヴィオラ、ヴァイオリン、 ハープ、ファゴットetc)に等しい音強度、更に他の実験対象ギターに比べると実に5dbも高いそれを表した。
結論を述べると、クラシックギターの持つ主な制限は3つともカヴァリエーレ・マルコ・セッリット設計コンサートギターによって完全に解決、克服された訳である。